こんにちは!
このレポートでは、弊社代表取締役 馬奈木俊介が投稿した政策概要の概要解説を行います。
G20の「アイデア・バンク」として位置付けられ,G20各国の有識者及びシンクタンク関係者から構成されるT20(Think20)の2023 Indiaにて、弊社代表取締役 馬奈木俊介投稿の、新国富指標を用いた包括的な国富の成長測定に関する政策概要が採択されました。
この政策概要は、タスクフォース3:LiFE、回復力、ウェルビーイング(LiFE, Resilience, and Values for Wellbeing)に位置づけられています。
LiFE(“Lifestyle for Environment (LiFE)”)(環境のためのライフスタイル)とは、COP26でモディ首相によって導入された概念で、持続可能な消費と生産に関して個人と社会の行動の変化を伴います。
GDPを超えた持続可能性評価指標の必要性
従来、発展の指標として国の物理的資産と商品やサービスの金銭的価値のみを測定するGDPが用いられてきました。しかし、GDPは資産創出のための燃料消費と天然資源の枯渇、人間の健康、周囲の環境、社会福祉に引き起こされる付随的な損害は含まれておらず、人間の幸福を評価する上で誤解を招く可能性があることが問題視されていました。
そこで、国富を推定する際にGDPを超える取り組みとして、2012 年 6 月にリオデジャネイロで開催されたグリーン経済に関する国連会議において、新国富指標(Inclusive wealth index (IWI))が作成されました。IWIは、一国の自然、人間、社会、物理(製造・金融を含む)資本の合計に基づく指数であり、国のマクロレベルの成長と発展に焦点を当てた包括的なアプローチです。IWIでは、個人の富が個人資産のみから発生するのではなく、コミュニティにおける共有資産の共同利用からも発生することを測定できます。
IW(新国富)は、自然資本、人的資本、生産資本、さらには社会資本の地域的多様性に応じて、国全体に空間的に分布しています。したがって、国のIW価値を推定するためには、正確な空間的・時間的指標が必要になります。IWが空間的に測定されれば、ある地域で突然失われた自然資本を他の地域で補うことも可能になります。
LiFE指標採用の課題
LiFE指標を成長とウェルビーイングの指標として採用するために公的資源を大幅に投入し、あらゆる側面の能力開発を行う必要があります。しかし、指標の理論的根拠を設定した後でも、以下の理由により、その測定が困難な可能性があります。
●国民の意識の欠如
〇LiFE指標の概念とその意味することが理解されないことが最大の課題である。
●情報やデータへのアクセスの制限
〇LiFE指標の測定のための生活の様々な社会的・文化的側面全てにおいて定量的で信頼できるデータを入手することが困難である。
●変化への抵抗感
〇LiFEは包括的な開発運動である。人々の参加と変化を受け入れる意欲が重要である。
●調整の欠如
〇国内の州・地域間の調整と、透明性のある方法でデータを共有する意欲が不可欠である。
G20諸国へ向けた提言
この政策概要では、G20諸国全体でLiFE指標を導入し実施するための以下の3つのステップを紹介しています。
●G20諸国は、LiFE指数の普遍的に受け入れられる方法論を開発するために、互いに協力する必要がある。
●G20諸国は、LiFE指標に関連した能力構築のために、互いに協力する必要がある。能力構築では、指標値の読み方や解釈の仕方、値の改善方法、短期・中期・長期的に取るべき行動などを網羅する必要がある。
●LiFE指標の方法論の確立とともに、以下のことを行う。
〇持続可能なライフスタイルを取り入れる
〇二酸化炭素の排出量を削減する
〇生産性と所得の増加による生活水準の向上
〇教育・知識の充実
〇ステークホルダー間の連携強化
G20各国が、豊かさの評価をIWIを応用したLiFE指標を用いて行うことで、より包括的な持続可能性を評価する必要性と協力を呼び掛けています。ぜひ、ご一読ください。
Managi, S., Bhattacharya, A. & Bhattacharya, T., Policy Briefs T20 for
the Presidency of G20 in 2023, The G20 Insights Platform, Global
Solutions Initiative Foundation, Inclusive Wealth Index: A
Comprehensive Measure of LiFE Towards ‘Net
Zero’