お問い合わせ

TOPICS

  • レポート

東急不動産、「サザン鳥栖クロスパーク・プロジェクト」に見る、ESG分析の新たな可能性

  • 導入事例インタビュー
  • 新国富
  • 新国富指標分析

INDEX

企業価値は財務指標だけで測られる時代から、多様な社会課題への対応や成果なども考慮されるようになりました。企業が持続的に成長を目指す上で、ESG(Environment・環境、Social・社会、Governance・ガバナンス)への取り組みが不可欠となっています。ESG分析は、企業に潜在する非財務リスク(NFR:Non-Financial Risk)を「見える化」するだけでなく、長期的な競争力や資本コストに直結する指標として注目されています。

クライアント紹介

会社名:東急不動産株式会社
事業内容:総合不動産業
HP:https://www.tokyu-land.co.jp/

東急不動産株式会社インダストリー事業本部、島田 祥次様(左)・大久保 航様(右)


東急不動産株式会社は、「サステナブルなまちづくり」を掲げ、都市や住宅、インフラ事業を通じて社会課題の解決に挑戦し続けている環境推進企業です。その最新の試みが、全国で産業まちづくり事業を推進する「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」です。本プロジェクトの一環として、佐賀県鳥栖市で進める大規模産業団地開発「サザン鳥栖(とす)クロスパーク」では、再生可能エネルギーや次世代物流を取り入れるとともに、aiESGの「新国富指標(IWI)」(※)を用いたESG分析を導入されました。環境・社会・人材を総合的に評価することで、地域と未来に資する価値を明らかにしました。
本記事では、東急不動産株式会社 インフラ・インダストリー事業ユニット インダストリー事業本部、大久保 航様・島田 祥次様に、ESG分析を導入した背景や得られた成果、そして、今後の展望について伺いました。

(※)新国富指標(IWI)は、国や都市の豊かさを「人工資本」「自然資本」「人的資本」の3つで測定する国連採用の指標。日本では、aiESGの代表 馬奈木(九州大学主幹教授)が同研究領域の第一人者である。

東急不動産に聞く、ESGへの取り組みとインフラ・インダストリー事業ユニットの役割

――御社全体の事業内容と、その中でインフラ・インダストリー事業が果たしている役割について教えてください。

当社は「都市事業」「住宅事業」「インフラ・インダストリー事業」「ウェルネス事業」「海外事業」と幅広く事業を展開しています。その中でインフラ・インダストリー事業は、物流施設や再生可能エネルギー、データセンターなど、「日本の社会課題を解決すること」をミッションに、社会を支える基盤づくりを担っています。

具体的には、再生可能エネルギー分野では全国各地で太陽光や風力発電を展開し、脱炭素社会の実現に貢献しています。物流施設開発分野では、Eコマース拡大に伴う様々な需要に応えるインフラ開発・整備のみに留まらず、ドライバー不足など社会課題に対応する「働きやすい施設づくり」に取り組んできました。これらの事業は、当社の掲げる「サステナブルなまちづくり」の実践そのものだと考えています。

また、多岐に渡る事業領域の中で、当社全体でシナジー効果を生んでいくためにも、大規模なまちづくり開発に、インフラ・インダストリーユニットが一丸となって、取り組んでいます。

サザン鳥栖クロスパーク・プロジェクト「次世代産業団地」の全貌

――今回の「佐賀県鳥栖プロジェクト」についてご紹介いただけますか。

佐賀県鳥栖市は九州の交通結節点として高い優位性を持ち、全国の物流やものづくり支える重要な拠点です。非常に恵まれた立地を持ち、地震リスクも小さく、水資源や労働力も豊富です。一方で、近年は産業用地不足等の地域課題も顕在化していました。

私たちは、佐賀県や鳥栖市、九州大学と産学官民連携で「産業団地整備」に取り組んでいます。製造業を中心とした企業誘致を進めるとともに、地域住民が利用できる施設を整備し、スポーツ振興策なども計画。地域全体の活力向上と持続可能な未来を目指しています。
特徴的なのは、再エネ100%の実現や自動運転トラック対応といったGX(グリーン・トランスフォーメーション)・DX(デジタル・トランスフォーメーション)の要素を取り込んだ「次世代型産業団地」を目指している点です。

ESG分析という「社会的価値を数値で示す」必要性

――プロジェクトの中でどのような課題があり、弊社のESG分析を導入されたのでしょうか。

プロジェクトの推進にあたり、当社ではESGの各側面で課題を抱えていました。
環境(E)面では造成やインフラ整備に伴う景観や生態系への影響、社会(S)面では地域住民との共生や雇用創出、ガバナンス(G)面では長期にわたるリスク管理や多様なステークホルダーとの合意形成など、いずれも重要な課題があったのです。
こうした背景から、地権者様や自治体に「どのような社会的価値をもたらす事業なのか」を定量的に示す必要性を強く感じていました。九州大学との連携を通じて、aiESGの代表でもある馬奈木教授が推奨している「新国富指標」を知り、単なる経済波及効果だけではなく、「人工資本・人的資本・自然資本(新国富)」を総合的に可視化できる点に大きな意義を感じ、導入を決めました。

「新国富指標」が示したインパクト

――具体的な分析の進め方と、印象に残った結果について教えてください。

私たちが提供したのは、現時点での土地利用計画や想定建設規模、従業員数などの基礎データです。まだ構想段階でしたので、多くは想定値を用いて算出しました。
結果として、約30兆円という非常に大きな「新国富」の増加が見込まれることがわかったのです。経済効果だけでなく、人材や自然環境まで含めて評価した結果であり、想定以上のスケール感に正直、驚きました。
しかし、人工資本・人的資本が伸びる一方で、自然資本が減少する傾向も明らかになりました。この分析結果により、私たちが取り組むべき課題が顕在化され、まち全体の緑化や再エネの工夫など、自然資本を補う施策の必要性を再認識しています。

――分析結果はどのように活用されていますか。

まずは、佐賀県鳥栖プロジェクトのプレスリリースにて公表しました。地権者や自治体に「社会的価値」を定量的に示す材料として非常に有効だと考えています。
私たちのグループ内でも「他の事業にも活用できるのでは」という声が上がりました。数字が大きすぎて一人歩きしないように注意しながらも、「事業の意義を説明するための武器になる」との認識が広がっています。

サステナブルな未来のために

――今後の取り組みについて教えてください。

今後は、佐賀県鳥栖プロジェクトだけではなく他の開発プロジェクトもですが、自然資本を補うため、緑化や環境に配慮した施工を徹底するとともに、再エネ100%の導入を推進していく所存です。さらに地域人材の雇用やデジタル技術の活用を通じて、持続可能なまちづくりを進めていきたいと考えています。

また、今回の成果を踏まえて、全国の他地域で進めている開発案件でも同様の分析を導入することを検討しています。ESG分析は単なる社会貢献ではなく、事業推進と企業価値向上の両立に欠かせない要素だと感じました。

――aiESGに期待することと読者へのメッセージをお願いいたします。

私たちは、aiESGが今後も科学的・客観的なデータ分析を基盤に、多面的な評価と新たな視座を提示してくださることを期待しています。また、これまで培われてきた知見を活用し、持続可能な成長を支えるために必要な方策について、より具体的な助言と支援をいただければ幸いです。

私たちは、サステナブルな社会の実現を目指し、地域の未来づくりに取り組んでいます。佐賀県鳥栖プロジェクトや他地域での取り組みに、ご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

――本日は、ありがとうございました。ESG分析、新国富指標が、企業にとって「説明責任」を果たすための手段であると同時に、未来に向けた競争力を高める戦略的ツールになりつつあるよう、今後も研究、開発に邁進していきます。

TALKバナー
社会と企業の理想を叶えるために、aiESGが果たす役割。
CONTACT

ESGに関するお悩みごとがございましたら、
お気軽にお問い合わせください。

VIEW MORE