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第1回 aiESGを始めた背景

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  • aiESGとは
    製品やサービス全てのサプライチェーンをさかのぼった
    ESG評価サービスです!  

     こんにちは!私たちは九州⼤学発のESG Techスタートアップです!

     本コラムでは、「aiESGに興味がある」「ESG分析をしたいけど何をしたら良いか分からない」「そもそもESGって何?」という方に向けて、ESGのグローバルトレンド、弊社サービス、導入事例などをご紹介いたします。また、弊社で働くスタッフの声も定期的に上げていきます。
     初回のコラムでは、弊社がサービスを始めた背景をお伝えします。


    ESG経営の今、そして求められているもの

     
     2006年に国連が機関投資家に対し、「ESG」(環境、社会、企業統治)の観点を持つことを提唱してから20年弱、企業におけるESGの取り組みの重要性が世界的に増しています。投資家が企業の持続可能性を考慮して行う投資を、サステナブル投資やESG投資と言います。サステナブル投資とは、ESG投資を含む投資の一形態であり、企業や産業が持続可能であることを前提とした投資です。ESG投資とは、投資家が企業の社会的責任に関心を持ち、環境(Environment)や社会問題に対する企業の取り組み(Social)、法令遵守(Govenance)などの統治の透明性を重視して投資を行うことを指します。

     各国のESG調査機関が連携したサステナブル投資の普及団体であるGSIA(世界持続的投資連合)1)によると、ESGを考慮するサステナブル投資は世界の総額(2020年)で35.3兆ドル(約4600兆円)に及びます。さらにここ数年は毎年10%程度の成長率が続いており、今後もESGに取り組むことの重要性はますます高まっていくことが予想されます。

     35.3兆ドルとは、調査対象の機関投資家の運用資産総額98.4兆ドルの35.9%にあたります。つまり、全運用資産の3割以上がGSIAが定めるESG投資に該当することになり、ESGへの配慮が投資家の重要な判断要素となっています。こうした背景を受けて、これらに配慮した経営を行う企業が増える一方で、「グリーンウォッシュ」(実態を伴わないのに、あたかも環境に配慮した取組をしているように見せかけること)にあたる事例も出現し、問題視されています。その企業が何を根拠に「環境に配慮している」「サプライチェーン(供給網)に関与する人の人権を尊重している」と言っているのかを見極めるのは、決して簡単なことではありません。投資家や取引先の企業、そして消費者に客観的に示せるESGのデータが今、求められています。



    サプライチェーンを通じた人権項目への関心の高まり


     ESGの取り組みの中でも、近年特に重視されているのが、サプライチェーンを通じた人権問題です。下の図1は、2015年と2021年のESG投資額の変化を世界地域別に示したグラフです。

    図1 世界の地域別ESG投資額の変化
    Interactive Data Platform(Climate Bonds Initiative)より作成

     
     グリーンは環境破壊防止に対する投資、ソーシャルはサプライチェーン上の人権リスクや地域社会との関わりに対する投資、サステナビリティは気候変動対策に対する投資を示しています。ESGを重視した投資は2015年から2021年にかけて大きく増加しています。ESG投資額全体では欧州がトップで、アジア太平洋、北米と続いています。全体的には、環境に対する投資であるグリーン投資が多くの割合を占めていますが、人権に対する投資であるソーシャル投資が近年増加しています。

     このように、従来サステナブルなサプライチェーンの構築を促す動きは、環境破壊防止と気候変動対策の分野が中心でしたが、近年は人権に関する規範の構築が進んでいます。例えば、欧州委員会(EC)は、2022年2月に企業のサステナビリティ―及びデューデリジェンス(事業活動における人権や環境への悪影響を予防・是正する継続的な取り組み)の義務化指令案2)を発表しました。このように企業は、サステナブルかつ事業活動による負の影響を予見・是正し社会的・道義的にも責任ある企業行動を、製品・サービスを提供する全てのプロセスにおいて促進することが要求されつつあります。

     日本においても、2022年9月に経済産業省が「国連ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)3)や「責任ある企業行動のためのOECDデューデリジェンス・ガイダンス」4)を基礎とした「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」5)を策定し、人権リスクへの対応を促す動きが加速しています(図2)。さらに、持続可能な調達に関する国際規格(例:ISO20400)の整備、ESG投資家によるエンゲージメント(投資先企業への企業価値が向上するような提案)・ダイベストメント(投資撤退)などを通じ、サプライチェーン全体でのESG対応の要請はさらに高まっています。

    図2 人権に配慮した企業行動に関する規定の制定


     今後、ESGに配慮した最適なサプライヤー評価やマネジメントを実施するためには、従来の企業単位での取り組みの評価だけでなく、製品・サービス単位でのサプライチェーンの上流まで考慮した、より細やかなESGリスクとその先にある自社への影響を理解することが必要となります。


    参考文献

    1. Global Sustainable Investment Aliance:GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2020, https://www.gsi-alliance.org/.
    2. 日本貿易振興機構JETRO:欧州委,人権・環境デューディリジェンスの義務化指令案を発表、https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/02/270ab8bbbd9b69d1.html,2022.02.28.
    3. 国際連合広報センター:ビジネスと人権に関する指導原則,https://www.unic.or.jp/texts_audiovisual/resolutions_reports/hr_council/ga_regular_session/3404/,2011.03.21.
    4. OECD:責任ある企業行動のためのOECDデューデリジェンス・ガイダンス,https://mneguidelines.oecd.org/OECD-Due-Diligence-Guidance-for-RBC-Japanese.pdf,2018.
    5. 経済産業省:責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン,https://www.meti.go.jp/press/2022/09/20220913003/20220913003-a.pdf,2022.09.