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[Commentary] Future Activities of the Task Force on Inequality and Socially Related Financial Disclosures (TISFD)

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2024年5月、不平等・社会関連財務開示タスクフォース(Taskforce on Inequality and Social-related Financial Disclosures、以下「TISFD」)はウェブサイトを公開するとともに、今後取扱うテーマや既存の基準等との関係性、公表を計画している資料等を含む活動方針を公開しました。本稿では、TISFDが公開した活動方針について解説します。

TISFDの設立背景と概要

TISFDとは、企業や投資家に対し、不平等や社会関連のリスクや機会・影響を特定し、評価・報告するための推奨事項を開発するグローバルイニシアチブです。不平等は現代における重要な社会問題であり、不平等による所得の偏りは社会の亀裂を生み出します。また気候変動や自然の喪失は不平等を悪化させ、貧困層や疎外されたコミュニティに深刻な影響を及ぼします。

 企業や投資家の行動は社会や経済に多大な影響を及ぼす一方、不平等に与える影響、さらには不平等がもたらす影響については明らかではありません。TISFDの目的は、不平等と社会課題に関する財務開示の強化を図り、企業と投資家が財務リスクと影響を特定し、評価・管理するための支援を行うことです。

TISFDの設立背景等についてはPrevious Articleをご確認ください。

基本的な活動方針

TISFDは概要資料と併せて、具体的な活動方針(最終版)をTISFD Proposed Scope and Mandate(以下「基本方針」)として公表し、広くフィードバックを求めています。基本方針は7つから構成されています。

1. テーマ

・TISFDは統合的かつ首尾一貫した方法で社会と不平等に関連した問題(企業の人権を尊重する責任、不平等の解消、人々のウェルビーイング向上、人的・社会資本への投資の間に存在する補完性)にアプローチする。

・当該アプローチを可能にするため、人々への影響と依存、関連するリスクと機会の関係を明らかにする概念的な基礎を定める必要がある。

・概念的基礎には、人々の状態を構成するさまざまなテーマ、トピック、次元、影響を受ける異なる利害関係者、そして不平等を明確にすることを含み、社会や不平等関連問題、さらには気候変動や自然関連リスクへの取り組みとの間の深い相互関連性も反映すべきである。

・TISFDの社会および不平等に関連する問題へのアプローチは、開示推奨がすべての社会問題を個別に取り扱うことを意味するのではなく、一般的に関連性が高く、情報の利用者が広範または重大な、社会および不平等に関連するリスク、機会、および影響に関する開示推奨を優先的に取り扱う。

2. マテリアリティアプローチ

・様々な基準設定主体や規制当局が異なるマテリアリティの観点を採用していることを踏まえ、インパクトマテリアリティの観点と財務マテリアリティの観点から、相互運用可能な開示推奨を策定する。一方で、実行可能な場合には、これらを区別する。

・不平等に関するマテリアリティについても検討すべく、組織の影響、不平等の蓄積、企業、投資家、市場、金融安定性に対するシステムレベルの財務的影響も証明する。

3. 既存の国際原則等との関係性

・TISFDの開示フレームワークとグローバルスタンダードとの整合性を確保した上で、不平等のシステミックリスク(及び関連する機会)を含む財務上の重要なリスクを管理、及び不平等に対する企業と投資家への影響の管理に関して、追加的なフレームワークやガイダンスを検討する。

・人々への影響、不平等、財務的に重要なリスクとの関係についての明確な証拠基盤を構築し、影響とリスクの特定、評価、管理に関する十分なガイダンスが存在するかどうかを評価する。

4. 既存の基準等との関係性

・TISFDは、当該プロセスにおいて不平等を助長しないよう取り組む必要があり、タスクフォースの構成、審議、決定には、市民社会、労働組織、疎外されたグループの参加が投資家や企業と同様に重要である。

・既存の報告基準およびフレームワークの内容を分析し、どの指標やメトリクスをTISFD開示フレームワークに含めるかについて決定を行う。

・TISFDは、TCFDおよびTNFDによって採用されたアプローチを維持しつつ、不平等や社会関連の問題に対処するために、企業と金融が人々に与える影響に関する、国際的な行動基準(ビジネスと人権に関する国連指導原則、OECDの多国籍企業向けガイドライン)を適切に反映させ、内容の整合性を確保する。また、社会問題への影響がどのように財務リスク、特に不平等のようなシステムレベルのリスクにつながるかについても特定する。

・TISFDの開示推奨事項は、気候および自然関連の問題に関する開示推奨と合わせて、公正な移行への取り組みを促進するツールとなるため、気候、自然、社会、不平等に関連するリスクと影響が一貫性を持ち、補完的な方法で対処されるようにする。

・TISFDは、当該プロセスにおいて不平等を助長しないよう取り組む必要があり、タスクフォースの構成、審議、決定には、市民社会、労働組織、疎外されたグループの参加が投資家や企業と同様に重要である。・

5. 公表予定資料

1グローバル開示フレームワーク開示推奨事項と関連するガイダンスを含むグローバルフレームワーク
2概念的基礎と定義社会および不平等関連の概念とそれらの相互関係を理解するためのフレームワーク
3影響とリスクの経路に関する証拠集企業や投資家が人々や不平等に与える影響、関連する個別のリスク、不平等や社会関連の問題に関連するシステムレベルのリスクについての資料集
4メトリクス、指標、およびデータに関するガイダンス不平等および社会関連の影響、依存関係、リスクと機会の報告において、意思決定に有用なメトリクスに関するガイダンス
5閾値と目標に関するガイダンス不平等および社会関連の影響、依存関係、リスク、機会の報告における閾値と目標に関するガイダンス
6特定と評価に関するガイダンス重要な不平等および社会関連の影響、依存関係、リスク、機会の特定と評価に関するガイダンス
7能力構築リソースTISFDの開示フレームワークと推奨事項を使用するために、影響を受けるステークホルダー(企業、投資家、政策立案者、労働組合、市民社会組織、および労働者や農村および先住民コミュニティなどを含む幅広い対象)に対するサポート資料

6. 意図するアウトカムとインパクト

開示フレームワークの最終的な目標は、短・中・長期の財務リスクの軽減、金融の安定性と回復力の強化、マクロレベルの経済成果の改善、人々の人権を尊重し、人間の発展と福祉を向上させることであり、これを実現するために、TISFDは以下の成果に焦点を当てて活動する。

1) 企業と金融機関が、人々に対する影響や依存関係を理解し、不平等および社会関連の影響とそれに関連する財務リスクや機会を特定、測定、管理、開示する能力を強化する。

2) 金融機関が、不平等をシステムレベルのリスク(不平等の削減による利益という点での見過ごされがちな機会)と認識し、投資先と自らの活動が不平等に与える総合的な影響を理解し、この理解を財務リスクの評価、資本の配分と価格設定、投資先との関与、投資構造に組み込む。

3) 基準設定機関と政策立案者が、TISFDの推奨事項を報告基準や法律に組み込み、グローバルな調和を促進する。

4) ベンチマークおよび評価提供者が、社会関連のベンチマークと評価の正確性、関連性を向上させる。

5)市民組織が、企業や金融機関が不平等および社会関連の問題にどのように対処しているかを追及する能力を持つ。

6) 政府、金融監督機関、およびマクロプルーデンシャル当局が、開示情報を利用して社会および金融システムを保護するための効果的な政策や戦略を策定する。

7. 指標のギャップと弱点

既存の基準には有用な開示指標やメトリクスが含まれている一方、企業や投資家の社会および不平等に関連する影響、依存関係、リスク、機会については、意思決定に役立つ指標やメトリクスの必要性が依然として必要であると認識している。

今後のスケジュール

TISFDは、今回のウェブサイト開設に合わせて公表された文書(概要資料、基本方針案を含む)についてのフィードバックを2024年8月1日まで受け付けています。その上で、2024年9月に予定しているTISFDの正式な発足時に、フィードバックを受けた対応についても公表するとしています。

終わりに

公開されたTISFDアプローチでは、UNGPs、ILO、OECDに準拠し、既存のサステナビリティ開示基準(ESRS、GRI等)を参照し、既存の枠組み(TCFDやTNFD等)と相互運用する形で、社会および不平等に関連する影響、依存関係、リスク、機会を明らかにする事が求められます。これらを踏まえると自社の労働者、サプライチェーン、地域コミュニティ、顧客といったバリューチェーン上の領域において、社会および不平等に関連する指標等の開示が必要となる可能性が想定されます。まずは当該バリューチェーン上に位置付けられる人と自社事業の関連性やリスクを整理していくことが必要となるでしょう。

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参考情報へのリンク(外部サイト)
TISFD
TISFD – Technical consultation on proposed scope and mandate (FINAL)


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