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【解説】スコープ3測定を取り巻く現状と課題
~2次データの利用可能性~

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INDEX

1.はじめに

ESG・GHG算定の中で大きな比重を占める「スコープ3」。
スコープ3は、バリュー・チェーンで発生する間接的な温室効果ガス排出の中でスコープ2(他者から供給された熱、電気など)に含まれないもので、上流及び下流の両方の温室効果ガス排出を含むとしています。

CDP公開資料によると、スコープ3の排出量は、平均的な企業のフットプリントの75%を占めており、企業の脱炭素化において解決すべき大きな課題であり好機でもあるといえるでしょう。
しかしスコープ3測定の方法に関しては未だ発展途上で、推奨されている1次データを利用した測定方法が障害となり、測定を断念している企業も少なくありません。

本稿では、スコープ3を取り巻く状況をまとめたうえで、合理的なESG算定を行うためにaiESGが提供しているサービスについてご紹介します。

2.SBTiのスコープ3に関する調査結果の公表

GHG排出量削減に関して世界的に大きな影響力を持つ機関の一つが、先日のaiESGレポートでも紹介したSBTiです。

【解説】GHGからESGへ:国際動向とより広範なサステナビリティ考慮へのシフト
https://aiesg.co.jp/topics/report/240920_ghgtoesg/

SBTiは参加企業に対し科学的根拠に基づいた共通のGHG排出削減目標であるSBT(Science-based Target)を作成しています。
SBTiは2024年7月30日、スコープ3排出量の検討に関する調査結果として、スコープ3ディスカッションペーパーを始めとする4つの文書を公開しました。

SBTi releases technical publications in an early step in the Corporate Net-Zero Standard review
https://sciencebasedtargets.org/news/sbti-releases-technical-publications-in-an-early-step-in-the-corporate-net-zero-standard-review

この特にスコープ3ディスカッションペーパーでは、スコープ3の削減目標の設定・実行に関する課題が指摘され、そのハードルの高さを浮き彫りにしました。

指摘された課題としては、集計されたスコープ3排出量を主要指標として使用することへの懸念点に加え、GHG算定方法にばらつきがあることや2次データに依存していることなどが挙げられています。
1次データとは、企業のサプライチェーン内において実際に取得されたデータに基づいた計算から得られる値のことであり、スコープ3カテゴリー1である「購入した製品・サービス」を例として挙げると、サプライヤーの固有のデータを用いて計算された、原材料調達から生産までの製品レベルのGHG排出量データや、サプライヤーから提供された固有のエネルギー使用または排出データが含まれます。

対して2次データは、産業ごとの平均値等を含むデータベースなどによって代理的に算出される値を指します。同じく「購入した製品・サービス」を例にすると、排出原単位データベースから算出した材料ごとの業界平均排出原単位などが相当します。
経済産業省・環境省が発行するカーボンフットプリントガイドラインによると、カーボンフットプリントにおける活動量に関しては原則として1次データの使用が求められます。

またディスカッションペーパーでは、排出量や排出原単位の変化を直線的に予測する現在の目標設定方法の不十分さや、ネットゼロ・スタンダードの掲げる「短期67%以上、長期90%以上のカバー」という要求がもたらしうる排出量数値の除外や、短期→長期の目標以降に関する曖昧さが生じうることが指摘されています。
データの限界、排出量の変動性、緩和行動を直接GHGインベントリの変化と結びつけることは難しく、したがって脱炭素化に向けた進捗状況の測定は複雑さを極めています。
さらにバリューチェーン上の企業の能力は様々であることを考慮すると、企業がスコープ3目標を実施することは困難であると述べられています[1]。

2023年末時点でSBTiに加入する企業は全世界で4000社を超え、そのうち97%がスコープ3に関する目標を定めていますが課題は山積しています。
SBTiは今回の文書の中で環境属性証明書(※)を活用するシナリオを分析し有効性が認められるとしていますが、その多様なメソドロジーに関してさらなる検討が必要であると結論づけました[2]。

※環境属性証明書/エネルギー属性証明書:「どの発電所で、いつ、何kWh(キロワット時)の電力が発電されたか」を電力トラッキングシステムを通じて示す証明書のこと。企業等が再生可能エネルギー由来の電力を私用していることを主張する際に主に利用される。

3.aiESGの提供するサービス

これまで見てきたように、スコープ3排出量算定に関して多くの企業が課題を抱えています。その原因の一つが、スコープ3を含むGHG排出量算定において1次データの利用が困難なことです。

SSBJ公開草案では、1次データは2次データに比べ報告企業のバリュー・チェーン上の活動やGHG排出をより詳細に表現するとされていますが、1次データの取得が困難であることから、多くの企業が2次データを利用してESG算定を行っているのが現状です。
1次データによる算定は比較的データ取得が進んでいるGHGにおいてさえ実施困難な状況であり、社会面の算定はより困難であるといえるでしょう。

そこで産業平均データを基にした2次データのハイブリッド使用が進んでおり、aiESGでは2次データのデータベースを利用したESG算定サービスを提供しています。2次データを利用することで安価かつ短期間で、スコープ3を含むGHGの概算をすることが可能となります。また、データ量が豊富ゆえに包括的な分析結果を期待できます。
2次データは集計値であるため1次データ使用時よりも計算の精緻さ・詳細さは劣りますが、スコープ3測定へのアクセスを容易にし、ESG算定への裾野を広げることにつながります。

aiESGはGHG、その他環境、社会、経済影響を含めた統合的なESG・サスティナビリティ指標について1次・2次データベースともに柔軟に対応することが可能です。

4.おわりに

本稿では、スコープ3を取り巻く状況とaiESGのサービスについてご紹介しました。

ESG算定では2次データ使用が主流となっており、特にスコープ3や社会面に関しては1次データを用いるのは非常に困難と言えます。多くの企業がスコープ3への対処にハードルを感じている中、aiESGのサービスをはじめとした2次データの利用が今後重要になってゆくといえます。

aiESGでは、ESG関連基準やフレームワークについての基本的な内容から実際の非財務情報の開示に至るまで、サポートいたします。ESG対応にお困りの企業様はぜひお問合せください。

お問い合わせ:https://aiesg.co.jp/contact/

6.参考文献

[1]https://sciencebasedtargets.org/resources/files/Aligning-corporate-value-chains-to-global-climate-goals-SBTi-Research-Scope-3-Discussion-Paper.pdf

[2]https://sciencebasedtargets.org/news/sbti-releases-technical-publications-in-an-early-step-in-the-corporate-net-zero-standard-review


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