10月8日（水）に、英国国家統計局（ONS）が主催する富の計測：Beyond GDP ワークショップが開催され、aiESG代表の馬奈木が登壇いたしました。このレポートでは、馬奈木の講演、国連・新国富指標のaiESGでの応用例とともに、衛星画像などを活用した活用事例を紹介しています。

ワークショップのプログラムは下記の通りです。

13:00- 13:05 pm | Introduction, welcome remarks, and scene-setting
Chair: Richard Heys
Director and Chief Economist (Acting), ONS

Session 1| 13:05-13:35pm| ONS Using National Accounting to Define Inclusive Wealth
Presenter: Cliodhna Taylor
Head of Well-being and Economic Statistics Innovation | Wellbeing, Innovation, and Productivity


Session 2| 13:35- 14:05pm | Inclusive wealth: real usage of capital using global and satellite data
Presenter: Shunsuke Managi
Professor of Technology and Policy and the Director of the Urban Institute at Kyushu University, Japan

Session 3| 14:05-14:35pm | Comprehensive Wealth in the UK: data and discussion
Presenter: Rob Smith
Midsummer Analytics and Senior Associate, International Institute for Sustainable Development

Session 4| 14:35- 15:05pm | Unresolved issues in Natural Capital drawing on inconsistencies in asset classifications between global manuals
Presenter: Bram Edens
Head of section for environmental-economic accounts and supply-use tables at the OECD’s Statistics and Data Directorate

15:05- 15:55pm | Discussion

15:55- 16:00pm | Closing remarks

イベントセッション要旨

計測の難しい資本の国際的な合意と進歩

1. 国際的な合意の重要性
従来、経済成長の主要指標であったGDP（国内総生産）では、ウェルビーイング、自然資本、人的資本といった「非財務」の価値や、環境破壊、格差拡大といった負の側面を捉えきれないという限界が指摘されてきました。

人類の真の豊かさや持続可能性を測るためには、これらの抽象的で「測れないもの」とされてきた非財務価値を定量的に評価し、企業や自治体の活動に組み込むことが不可欠です。この定量化と国際的な枠組みの整備が、政策や投資判断の基準を「GDPを超えた成長指標」（Beyond GDP）へと転換させるために、極めて重要な国際的課題となっています。

2. 進歩の状況：「測れない」から「測る」フェーズへ
現在、国連をはじめとする国際機関では、Beyond GDPを掲げ、幸福や持続可能性を数値で把握する枠組みの整備が加速しています。これにより、非財務価値は「抽象的な概念」から国連レベルで体系化が進み、「測れるもの」へと変化しつつあります。
（参照：https://aiesg.co.jp/topics/report/250515-international-esg-trends/）

この進歩の具体例として、国連や各国でも代表的な取り組みとして紹介されている、以下の2つの流れがあります。

指標の名称 測定対象と目的

新国富指標（Inclusive wealth, Comprehensive wealth）： 自然資本・人的資本・人工資本を統合し、経済成長の土台となる資本の劣化・蓄積を貨幣価値で見える化。将来世代に残る「持続可能な富」を数値化します。
ウェルビーイング指標： 健康・教育・環境・所得といった要素を統合し、地域や社会単位でのウェルビーイング（幸福度）を定量的に把握し、政策評価や非財務開示への応用を目指します。

aiESGの取り組みは、前述の「Beyond GDP」の国際的な進歩において、技術的・学術的な基盤を提供することで大きく貢献しています。

特に、国連のSDG Knowledge Hubで代表的取り組みとして取り上げられた以下の2つの研究は、我々の研究室から発表されています。

新国富指標: Nature誌姉妹誌やScience誌に掲載された研究で、自然資本と人的資本を含む資本を統合し、持続可能な富を数値化する指標を開発しました。これは、非財務価値を貨幣価値で評価し、持続可能な経済成長を測るための画期的な手法です。

ウェルビーイング指標: Sustainability Scienceに掲載された研究で、生活の質（幸福度）を定量的に把握する手法を構築しました。

これらの研究成果は、国際的な議論をリードするだけでなく、aiESGのような組織を通じて、企業や自治体が非財務情報を定量的に開示し、社会的な価値やウェルビーイングへの貢献を見える化するための科学的根拠と実装可能なソリューションの基盤となっています。

本記事は、aiESGの代表である九州大学主幹教授馬奈木よる登壇内容に基づき構成しています。ウェルビーイングや包括的な資本評価に関心のある企業・自治体の皆様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
aiESGのサービスについて：https://aiesg.co.jp/service/