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はじめに
本記事は、aiESGのChief Researcherであるキーリーアレクサンダー竜太をはじめ、Chief Scientific Advisorである武田秀太郎、そして代表取締役の馬奈木俊介らが共同執筆した論文“ESG metrics and social equity: Investigating commensurability”に関する解説記事です。
本記事では、研究の内容を分かりやすく解説するとともに、aiESGが提供するサービスについてもご紹介します。
ESGデータ分析や戦略策定にご関心のある方は、ぜひ最後までお読みください。
論文タイトル：ESG metrics and social equity: Investigating commensurability
DOI(論文リンク)：https://doi.org/10.3389/frsus.2022.920955
研究のポイント・要約
本研究は、ESG評価のばらつきや情報開示の課題、またESG指標が企業の収益性に与える影響について明らかにしました。ESG評価機関が提供するデータを分析した結果、ESG全体、特にS指標において機関ごとの評価基準が大きく異なることが確認されました。また、ESGと企業価値に関する80の論文を調べ、ESG投資が長期的には安定した高いリターンを期待できることを示しました。
背景・目的
近年、環境・社会・企業統治（ESG）の視点から投資を行うESG投資が世界的に拡大しています。特に社会（S）に対する関心が高まる一方で、ESG情報の開示基準の乱立やESG評価の一貫性の欠如が問題視されています。本研究では、評価機関ごとの評価基準の分析と、ESG指標が企業の収益性に与える影響の実証を目的としています。
分析
本研究では以下の二つの分析を行いました。
1. ESG評価機関のデータベースの比較
全世界の企業約8,000社を対象とする代表的な4つのESG評価機関が使用するデータを比較し、評価要素の類似点やスコアリングの手法、スコアの相関について調査しました。
2. 企業価値とESGに関するシステマティックレビュー
ファイナンス分野のトップジャーナルから特定された80件の対象論文を分析し、ESGスコアと財務指標（ROA、ROE、Tobin’s Q）との関係を検証しました。
結果
本研究の分析から以下の2つの主要な知見が得られました。
1. ESG評価機関の間での指標の定義と評価基準の差異
同一企業に対しても評価機関ごとにスコアが大きく異なる事例が確認された他、統合ESGスコアの相関係数は0.318～0.549と低い値となりました。また、ESG全体において、すべての評価機関に共通する評価要素は4つしかなく、特にS項目においては共通する要素はないことが判明しました。（図1）
2. ESG指標が企業の業績に与える影響
ROAやROEなど短期的な財務指標に関しては概ねプラスの影響を与えるという結果が確認されたものの、どの評価機関のスコアを使うかによって結果が異なりました。中長期的な企業価値の指標となるTobin’s Qは、どの機関のESG評価を用いても安定的にプラスの影響を示しました。（図2）
考察
本研究の結果から、ESG評価の一貫性の欠如と評価基準の不統一が重要な課題であることが明らかになりました。これにより、投資家が企業のESGパフォーマンスを客観的に評価することが難しい状況が浮き彫りになりました。また、短期的なESGの財務への影響は概ねプラスとなり、長期的には安定したプラスの影響をもたらす可能性が示されましたが、短期的な影響についてはスコアリングの改善と更なるデータの蓄積が必要となります。
まとめ
本研究は、ESG評価の一貫性の課題や情報開示の重要性、そしてESG指標が企業の短期・長期的な収益性に与える影響について明らかにしました。ESG指標を単なる評価指標ではなく、企業価値向上の重要なツールとして捉えることが企業にとって重要であることがこの研究からも示唆されます。株式会社aiESGでは、定量的なESG評価やESG関連の規制対応、そして企業ごとの具体的な支援まで、包括的なサポートを提供しています。ESGに関する情報開示や実務でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
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