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経済成長の唯一の指標として長年君臨してきたGDP(国内総生産)。しかし、気候変動や生物多様性の喪失、格差拡大といった現代の危機を前に、その限界は明らかです。
国連の「Beyond GDP(GDPを超えた指標)」ハイレベル専門家グループ(HLEG)は、次世代のグローバルな社会・経済の計器盤となる最終報告書『Counting What Counts: A Compass of Progress for People and Planet(真に価値あるものを測る:人々と地球の進歩のための羅針盤)』を公表しました。
本コラムでは、世界193カ国の新たな意思決定の基準となる「4つの次元・31の指標からなるダッシュボード」の全貌と、その中核として実質的に採用された「新国富指標(包括的な富)」「自然資本」「ウェルビーイング」の重要性について解説します。
1. 新たなグローバル・スタンダード:「4つの柱と31の指標」
今回の最終報告書が提示した最大の成果は、GDPを補完し、社会の真の進歩を測るための「4つの次元・31の指標からなるダッシュボード」の実装です。
このダッシュボードは以下の4つの次元(柱)で構成されています。
1 基盤となる原則(Foundational principles)
2 現在のウェルビーイング(Current well-being)
3 公平性と包摂性(Equity and inclusion)
4 持続可能性とレジリエンス(Sustainability and resilience)
この枠組みにおいて最も注目すべきは、これまで学術界で牽引されてきた「ウェルビーイング」と「新国富指標」の概念が、このダッシュボードを構成する具体的な指標として提言されてます。
2. 第2の柱:「ウェルビーイング」の直接測定
第2の柱である「現在のウェルビーイング(Current well-being)」では、GDPという経済的手段ではなく、政策や企業活動の「究極の目的」である人々の幸福そのものを直接測定します。
具体的には、31の指標の構成要素として「主観的ウェルビーイング(Subjective well-being)」が組み込まれました。これにより、物質的な豊かさだけでなく、人々の健康、教育、そして「自分は幸せであるか」という主観的な実感や生活の質が、グローバルな進歩を測る公式な指標として機能することになります。
3. 第4の柱:実質的な「新国富指標(Inclusive Wealth)」の採用
第4の柱である「持続可能性とレジリエンス(Sustainability and resilience)」は、将来世代のための資本ストックが維持されているかを測る領域です。
結論から言えば、この次元は「新国富指標(Inclusive and Comprehensive Wealth)」が持続可能性とレジリエンスとして記述され、新国富指標の構成要素である各資本が採用されました。
「ストック」の評価:
毎年の生産量(フロー)ではなく、社会が保有する自然資本(Natural Capital)や人的資本(Human Capital)、物的資本(人口資本、Physical Capital) 、ソーシャルキャピタルといった「資本の総量(ストック)」を測るというアプローチが明確に位置づけられました。
指標への落とし込み:
新国富指標を構成する個々の具体的なデータ群(自然の価値や、教育・健康による人的資本の価値など)が、この第4の柱を支える31指標の構成要素として組み込まれています。
これまでの経済システムでは、自然破壊を伴っても木材が売れればGDPはプラスになりました。しかし今後は、自然資本の目減りはダッシュボード上の「負債」として厳格に扱われ、持続可能性を毀損していると客観的に評価されるようになります。
4. aiESGの視点:企業に求められる「価値創造ストーリー」の転換
国連が提示したこの新しいダッシュボードの実装は、ESGやサステナビリティ経営を推進する企業に対して、根本的なパラダイムシフトを迫るものです。
今後は、「自社の操業によるCO2排出をこれだけ減らした」といった単年度の環境対策(フローの改善)だけでは、市場や投資家から評価されません。
求められるのは、
自社のビジネスが、 地域の「自然資本」をどれだけ回復・再生させたか
働く人々や地域住民の「主観的ウェルビーイングや人的資本」をどれだけ向上させたか
という、「社会の資本ストック(新国富)を直接的に増やし、国連のダッシュボードの向上に貢献するプロセス」を精緻なデータで証明することです。
『Counting What Counts(真に価値あるものを測る)』という報告書名が示す通り、企業は「社会を本質的に豊かにしているか」が問われています。
aiESGでは、AIや空間ビッグデータを活用した独自の分析技術を通じて、企業がこの新しいグローバル・スタンダードにいち早く対応し、見えない自然資本や人的資本の価値を客観的に可視化するための高度な評価システムを提供してまいります。
aiESGについて:https://aiesg.co.jp/
【引用・参考文献】
国連Beyond GDPハイレベル専門家グループ最終報告書(PDF)
国際ESG動向の解説:「測れない」を「測る」フェーズへ
【関連書籍】
本件に関連し、aiESG代表で九州大学主幹教授の馬奈木の著書が出版されております。あわせてご参照ください。
aiESG代表で九州大学主幹教授の馬奈木の著書「ウェルビーイング経営の教科書」が出版されます
aiESG代表で九州大学主幹教授の馬奈木の著書「ウェルビーイングの経済学」が出版されました
【筆者情報】
馬奈木 俊介 aiESG代表取締役
九州大学 主幹教授。国連Inclusive Wealth Report Director。気候変動に関する政府間パネル (IPCC) 代表執筆者。OECD貿易と環境に関する共同作業部会副議長等多くの国際機関や企業との連携を実施。日本学術会議サステナブル投資小委員会委員長。長年のESG研究をもとにaiESGを創業。